おはようございます。情報セキュリティ相談センターです。
以前、SNSのマナーについて取り上げたことがあるかと思います。読んでいただけましたでしょうか?
便利で手軽に好きなことに関する情報を見ることができ、好きな芸能人や有名人の日常が覗けたり、あるいは友達と交流をしたりと、現代においてSNSは若者を中心に当たり前のコミュニケーションツールとなっています。
わたしももう長いこと利用していますし、インターネット上で知り合った友達もたくさんいます。
人と交流するだけでなく、動画を撮ってその広告で収入を得るといったSNSを利用した職業も当たり前になりつつありますよね。
インターネットが当たり前になり、そこでのコミュニケーションが当たり前になってくれば、トラブルもインターネット上で起こるようになってしまうのは必然です。人と人ですからね、トラブルが起きてしまうのは仕方がないです。
たしかに便利で、必要不可欠であるインターネットですが、その匿名性も手伝い、多くのトラブルが日夜発生しています。
みなさんは、いくらサイバー空間とはいえ、ほとんどの人が自由に出入りしている空間であることをきちんと認識していますか?
今やもうインターネットは立派な公共の空間なのです。
今年上映された細田守監督「竜とそばかすの姫」では、インターネット上の仮想世界「U」を「もうひとつの現実」と称していました。
しかし、そんな公共の場で毎日のように人を傷付ける行為が繰り返されています。その行為は主に「誹謗中傷」と呼ばれ、当たり前のようにインターネット上に多発しています。
なんとなく気に入らない有名人や芸能人、あるいは学校の友達や先生、作品の表現や、その人の態度や発言、そういった文句や悪口を公共の場に吐き出している人がたくさんいるんじゃないでしょうか?
みんな悪気があるわけじゃありませんし、自分が悪口や文句を言っているという自覚もない人が多いと思います。それほどまでに、インターネットというものはわたしたちの日常に溶け込んでいます。
では、あなたのそんな何気ない文句や悪口、あるいは意見など、それが誰かを傷つけるかもしれないと考えたことはありますか?
先ほども言いましたが、インターネットはもう「公共の場」です。その場でなにかしらの言葉を残すことには、多くのリスクが伴います。
今回より、今後数回に分けて「SNS及びインターネットで人を傷つけるということ」をテーマにいろいろとお話しできたらと思います。
インターネット上における炎上
「炎上」という言葉の意味をご存じですか?炎が燃え上がることじゃありませんよ。ネット用語の「炎上」のことです
スマートフォンおよびSNSの普及によって、芸能人の発言が身近になった現代、炎上は至るところで見かけるようになりました。
毎日誰かの発言や行動が炎上していますが、しかしそれが日常になりすぎてしまっています。
自分が興味のあること以外の炎上のことなんてもう気にしていたらキリがないほどです。
芸能人だけではありません、企業の広告やアーティストのMVでの表現など、今は様々なものに「コメント」をつけることが可能になっています。
たとえば漫画にコメントをつける場合、従来であればファンレターという形で作者に郵送する必要がありましたが、今はどうでしょうか?
ファンレターだけでなく、漫画を掲載しているアプリ、作者が運営しているSNS、さまざまな方法で「簡単」に「匿名」でコメントが残せます。
ファンレターを送るよりよっぽど簡単ですよね。家で、スマートフォンで、ほんの数秒で感想が送れます。
作者も、簡単にタイムリーな感想を見ることができますし、まったく便利な世の中です。
その一方で、とてもタイムリーに、そしてダイレクトに批判を送ることもとても簡単になってしまいました。
なにか間違ったことをすれば、すぐにコメント欄が批判の声で「荒らされ」ます。
もちろん、間違ったことはした方が悪いですが、往々にして炎上というものは炎上した側の意図しないところで起き、また、原因と炎の大きさが釣り合わないことがあるものです。
なかには、好きな芸能人の軽はずみな発言に対し、謝罪や訂正がほしいという気持ちで注意をする人もいれば、ただただみんなと一緒になって特定人物を攻撃したい、といった動機で、まるでストレス発散のように批判や暴言を繰り返す人だっています。
繰り返しになりますが、インターネットは基本的に匿名ですから、感想と同じように批判や暴言を言うのもとても簡単で手軽なのです。
だからこそ、炎上はあちこちで起き、そして全体に認識されないまま鎮火され、別の人が同じ過ちを繰り返す、といったことが起きてしまっています。
インターネットという公共の場にいる限り、わたしたちは常に炎上の危機にさらされていますし、それはつまり誰かを傷つけ、傷つけられる可能性があるということです。
では一体どういったことが問題視され、炎上へとつながるのでしょうか?
無自覚な暴力
炎上と言っても様々です。炎上した側が明らかに悪かったり、逆に勘違いや悪意から炎上させられてしまった場合もあります。媒体も、SNSでの発言だけでなく、テレビ番組での発言や態度、ミュージックビデオでの表現と様々ですよね。
最近でいえば、コロンビアのシンガーソングライターJ・バルヴィンさんがYouTubeにあげた曲のMVが問題視され、MVを削除するまでの炎上になりました。
黒人女性に手綱を付け、まるで犬のように連れて歩くシーンが問題視され、批判が殺到しました。
近年は、人種や性別の解釈による炎上が多く見られます。
タイツやストッキング、インナーウェアのメーカーATSUGIも数年前、イラストレーターとコラボした企画が女性を性的に見ているとして大きく炎上しましたよね。
センシティブな内容を取り上げること、それはもちろん火種になりかねませんし、覚悟と配慮をもって行わなければいけません。しかし、上で取り上げた2点は、発表時点ではセンシティブであるという自覚がなかったのではないでしょうか?
今回、MVを監督したライミ・パウラスさんはこの炎上に対し、「アートは美とポジティブさのみを伝える手段ではありません」とコメントし、コラボしたトキーシャさんも「アートは表現」と発言しています。
たしかにアートは自由なものです。きっと、このMVの発表がもう10年早ければ、ここまで大きな騒ぎにはならなかったかもしれません。
しかし、その一方で彼女は「傷ついたと感じる人がいたなら本当にごめんなさい」と謝罪しています。
インターネットという公共の場で、明確に誰かが傷つく行為をしたからこそ炎上したのです。しかしその本人たちには、炎上するまでその自覚がありませんでした。それこそが問題だったのではないでしょうか。
本日のまとめ
炎上事件というものは、毎日起こっているといっても過言ではありません。
そのほとんどが、発信者の自覚なく起きています。
不適切な動画や悪ふざけを面白おかしく投稿してしまった若者が「バカッター」と呼ばれ炎上した際も、彼らはきっと炎上するなんて微塵も思っていなかったでしょう。
ただ、面白いことを共有しようとしただけなのです。
J・バルヴィンさんも、ATSUGIも、はじめは消費者やファンに楽しんでもらいたいという気持ちで発信していたはずです。結果として、不快感を覚えたり傷ついた人が出てしまい、ここまでの炎上に至りました。
もちろん中には、悪意をもって傷つけることを発信し、それが炎上することだってたくさんあります。しかしその一方で、意図しないことが人を傷つけることだってあります。
それはもちろんインターネットだけではありません。「人が嫌がることをしてはいけない」と、わたしたちは小さな時から言われ続けています。
それがわたしたちが意図しないことだったとしても、です。
冒頭でも言いました、インターネットはもう公共の場なのです。
匿名ですから、普段は言えないようなことを言っている人だっているかと思います。
わたしだって、疲れているときや嫌なことがあれば、なんともなしにSNSに吐き出してしまうことがあります。
それでも、だれか見ているかわかりません。誰が傷つくかわかりません。
いつでも、見えない「誰か」のことを思ってSNSを使用しなければ、無自覚のうちに「加害者」になってしまうことがあります。
加害者にならないように、そして被害者にもならないように、全員が、常に「誰か」のことを考えてSNSを利用していかなければいけません。
現実世界だって、そうですからね。
次回は炎上「させた」側についてお話しする予定です。
<参考サイト>