インターネットという公共の場で人を傷つけるということ【2】


おはようございます。情報セキュリティ相談センターです。

今日は何回SNSを見ましたか?そこは安全で平穏でしたでしょうか。

以前炎上のお話をしたかと思いますが、本日はその続きです。

前回:インターネットという公共の場で人を傷つけるということ【1】

さて、わたしは今日、朝起きてから、支度をして家を出る前、出勤途中、休憩時間、と4回SNSを見ました。発信するのは「おはよう」や「今日寒いね」といった差し障りのないものがほとんどで、主な活用内容は好きなアーティストやアイドルの情報収集です。今日、わたしのSNSは平穏でした。

みなさんのSNSはどうでしょうか?

毎日、どこかしこで誰かの「粗」がさらされ、それを火種として炎上しています。前回も触れたように、興味のあるジャンル以外の炎上まで追っていたらキリがないほどです。

インターネットは、自分の好みに合わせてフィルターをかけ、興味のある情報だけを入手することができます。

それは効率がいいというメリットの反面、それ以外の情報が入りづらいというデメリットもあります。偏見をなくしたいと思い、様々な意見を取り入れる人はさまざまな意見を取り入れられる反面、特定の意見だけを求めている人は特定の意見しか目に入らないため、偏っていってしまいます。

どこかで炎上が起きていても、関心がなければその概要も、原因も、結果も、何も知らないまま気が付けば鎮火してしまいます。

情報のあふれた社会ですべてを追うのは無理な話です。しかし、まったく知らないままでは、同じことを繰り返しかねません。

今日皆さんのSNSは平穏でしたでしょうか。それとも不穏でしたか?

今回も、SNSを、インターネットを不穏たらしめる「炎上」のお話です。



水をかけるか油を注ぐか

まず大前提として、誹謗中傷や侮蔑、無責任な噂は人権の侵害に当たります。「してはいけないこと」であることを念頭に置いておいてください。

「人が嫌がることをしてはいけない」のは当たり前のことです。子供の時から言われていますよね。喧嘩をしたら親や先生が止めますし、言ってはいけないことを言ったら注意されました。そうして自然と、してはいけないことといいことの区別が身について大人になっていきます。

それは、インターネットでも同じです。

インターネットでは、毎日のように炎上が起きていますがその要因は様々です。

前回紹介したような、本人たちが思いもよらないところの配慮の足りなさや失言が原因であったり、あるいは不道徳的、不適切な行為を咎められたり。

さらに、炎上した後の対応によってさらに炎上することがあります。

最近では、お笑い芸人が選挙特番での発言が指摘されて炎上していました。

無礼、失礼に値する発言が注目され、「テレビに出すな」といったハッシュタグができるほどの炎上になり、その後出演した別の番組で反省の態度を見せていました。

しかし、今回気になるのはその芸人の奥さんおよび所属事務所の社長の炎上です。

なぜ炎上したのでしょうか?

今回の炎上を受け、奥さんはツイッターで反論とも取れるツイートを投稿しました。その反論、あるいは擁護ツイートはすこしでも芸人の炎上を庇い、抑えるためのツイートだったわけですが、まったくの逆効果になってしまいます。

「開き直り」や「礼節がないことをしょうがないで事務所が許すべきではない」といった批判が殺到しました。

そして、翌日奥さんはこれら一連のツイートが「乗っ取られたもの」だと投稿し、さらに炎上へとつながりました。

その真偽はわたしたちにはわかりませんが、批判していた、炎上させていた側からすれば、「なかったこと」にしたかったと見えてもおかしくありません。それが火に油でした。

炎上はなかなか収まる気配がなく、奥さんが水をかけて収めようとした行為は、結果として火に油を注ぐことになってしまいました。

該当ツイートは消され、火種となった選挙特番から日数が経った今でも、奥さんが何かを投稿すると乗っ取られたことや擁護について言及するコメントが付きます。

その中には、まっとうな意見や指摘だけでなく、今回の件には関係のない根も葉もないうわさや、心無い暴言が含まれています。それはもう、火種である芸人の無礼や失言に関係なく、ただ執拗に攻撃を繰り返すことが目的になっています。

そういった、SNSで娯楽的に攻撃を繰り返す人がいるからこそ、炎上は繰り返されています。



誹謗中傷と炎上の目的

では、誹謗中傷や炎上がどんな結果を招くのでしょうか?

1年前、恋愛リアリティ番組に出演していたプロレスラーの女性が自殺するという事件が起きました。覚えていますでしょうか?

当時相当話題になりましたから、鮮明に覚えている方も多いのではないでしょうか?

彼女が出演していたリアリティ番組は、男女がシェアハウスをする様子を観察する番組で、「台本がない」ことが売りでした。台本がないということは、どんなことがおきてもそれは出演者の性格や本質というわけです。

女性が炎上したのは、この番組内で起きたとある事件が原因でした。

大事なコスチュームを他の出演者の男性が誤って洗濯してしまい、それに怒った女性がその男性の帽子をはたきおとし、番組は険悪なムードになります。

視聴者は、この回がオンエアされるとすぐにその女性に対して厳しいコメントをつけるようになります。

たとえば、「プロレスラーが手を出しちゃいけない」や「洗濯機に放置していた方も悪い」といった意見です。こういった批判や意見にはわたしにも同感できる部分がありましたし、多少注意されても仕方がないことというのは、この件に関わらずあることです。しかし、中には口汚く罵ったり、暴言、あるいは「死ね」や「消えろ」といったコメントもありました。

日常生活で「死ね」や「消えろ」といった言葉を残すとき、それは明確に相手を傷つけるためではないでしょうか。

たとえインターネット上であろうと、それは変わりません。しかし、インターネットの「匿名」という性質は、現実世界よりもずっと簡単に、バレずに相手を攻撃できるようになってしまいます。

当たり前のことですが、匿名なら傷つけてもいいわけではまったくありませんが、やっぱり心理的にも名前がバレている状態よりずっと攻撃しやすいのです。

この事件の後、番組はもちろん女性のSNSは剣呑な雰囲気になりますが、リアリティ番組はこういった雰囲気こそが醍醐味であり、オンエアのさらに後日、追い打ちのように女性が「相手の男性が100%悪い」と言っているシーンが公開されると、すでにかなりの勢いで誹謗中傷を受けていたSNSはさらに悪い意味で盛り上がります。

そして、女性は自身のSNSで「消えられるもんなら消えたい」「さようなら」といった言葉を残して自殺してしまいます。

消えろ、死ねなどの言葉を匿名で、安全地帯から投げかけていた人たちは、本当にこの結果を求めていたのでしょうか?

軽い気持ちで、それこそ軽口のように死ね、消えろと言っていた人が大半ではないでしょうか。現実世界でも、軽口のようにこの言葉を使う若者はたくさんいます。実際死んでほしいわけでも、消えてほしいわけでもありませんよね。

でも、その結果が自殺でした。

先程、娯楽的に攻撃を繰り返すと言いましたが、娯楽とまではいかなくても、ムカついた気持ちを誰かにぶつける、といった意味を込めて誹謗中傷をしていた人はきっといます。それが死に追いやるとは思ってもみなかったのではないでしょうか。


本日のまとめ

誹謗中傷が原因で自ら命を絶った方はこの女性だけではありません。その原因がリアリティ番組なのも、世界を見れば彼女だけではありません。

数年前、日本でも活躍していたK-popアイドルの自殺も話題になりました。

その数日前に、その友人の女優も自殺しています。どちらも誹謗中傷に悩んでいました。

言葉はナイフとはよくいったものです。

テレビに出る彼女たちにとって消費者であるわたしたちは、片手で、指一本で簡単に傷つけることができてしまいます。

誰だって、たくさんの応援よりもひとつの誹謗中傷が気になってしまうものです。

インターネットだから、匿名だからといって、人を傷つけていいわけではありません。当たり前のことです。

インターネットは、公共の場です。匿名だろうと、そこにいるのはもうひとりのあなたです。

軽い気持ちで、加害者にならないように気を付けなければいけませんね。

次回は炎上のその後についてのお話です。



<参考サイト>

総務省